三菱HCキャピタルとは
三菱HCキャピタルは、2021年にリース業界大手である三菱UFJリースと日立キャピタルの合併により誕生しました。
三菱UFJ リースの強みであった大手向けの顧客基盤と、日立キャピタルの強みであった中小企業の顧客基盤や海外事業により、現在では事業領域が多岐に渡り、リスク分散が効いた事業ポートフォリオをとなっています。
三菱HCキャピタルの事業内容
三菱HCキャピタルの事業内容は大きく分けて、5つあります。
①ファイナンス・リース
航空機・工作機械・PC・不動産など、様々な商材のリースを行っています。
具体的には、三菱HCキャピタルが上記の商材を一度購入し、顧客に期間を定めて貸し出す契約を行います。
これにより、顧客は初期投資を抑えて事業を行うことができます。
この事業が三菱HCキャピタルの基本ですので良く理解しておきましょう。
(リース事業一覧)
②資産や機器の有効活用
医療用機器・半導体製造設備・オフィス機器などの買取を行っています。
ただ買い取るだけではありません。
例えばPCを買い取る場合、三菱HCキャピタル側がデータの安全な消去なども行います。
その上で、三菱HCキャピタルは、データを消去したそのPCを販売するのです。
そのため顧客視点で見ると、廃棄する際の煩雑な手間やセキュリティー面の懸念を解消した上で、機器の処分が可能となります。
③環境エネルギーソリューション
再生可能エネルギーの発電事業者や、エネルギーの省エネ化を考えている事業者向けのサービスです。
「SDGs」「固定買取制度(FIT制度)」「電力自由化」などを背景に多くの資金が環境エネルギー関連に流入しています。
そのため、今ホットな事業領域です。
ここでは、具体例を2つあげて説明します。
(a)電気販売事業者向けのサービス
三菱HCキャピタルではこれまで風力・太陽光発電事業を手がけたノウハウを基に、機械のリースだけでなく、事業計画から運転開始、保守サービスまでフルサポートが可能です。
そのため、再生エネルギーを発電したい事業者は、このサービスを活用することで、初期投資を抑えることができ、加えて保守メンテナンスなども一括して三菱HCキャピタルに依頼できるのです。
更に、発電した電力は「固定買取制度(FIT制度)」で国が買い取ってくれるため、ある程度の売上見込が立つという状況です。
まさに再生エネルギーの促進という国の方針を更に加速させるビジネスモデルと言えます。
(b)自社で電気を活用する企業向けのサービス
再生エネルギーを発電する場合、FITで国に買い取ってもらうだけではありません。
大型商業施設などは、自社施設内の電力消費に使用することが可能です。例えばイオンでは、三菱HCキャピタルと連携して、投資金額を抑えつつ、太陽光発電を行い、更に自社で使用する電気料金も低下させるスキームを活用しています。(事例紹介)
また、国内の大手企業の向上などでは、2050年までのCo2排出ゼロを公言する会社も増えて来ています。(事例紹介)
このような流れから、更に三菱HCキャピタルのビジネスチャンスが増えて来ると想像できます。
④ビジネスサポート
三菱HCキャピタルが、ビジネス上の「お金がかかる」「手間で面倒」「知識がなくて難しい」という課題に対してソリューションを提供しています。
例えば下記のようなビジネスを展開しています。
【ビジネスの例】
・給与計算の代行業務提供
・コールセンター対応代行
・海外業務支援(税務の情報提供・不動産の紹介・グローバル人材採用・機器、自動車のリース等)
・医師向けの開業サポート
・債権回収
上記はあくまで一例ですので、詳細はHPをご覧ください。
⑤建物リース
建物リースは、三菱HCキャピタルが地主から土地を借り、テナント企業が希望する建物を建築した上で賃貸する取引です。
商業施設をはじめ、ホテルや物流施設など様々な事業者と取引を行っています。(事例紹介)
加えてビルやマンションの管理組合に、駐車場設備や防犯カメラのリースを行う事業なども手掛けています。
そして上記で培ったノウハウも活用しながら、自社で商業施設の運営も行っています。(事例紹介)
三菱HCキャピタルの強み
①リスク分散の効いた事業内容
このように三菱HCキャピタルは、リースサービスを中心とした国内事業を幅広く行っています。
加えて、大手から中小企業の幅広い顧客基盤を有しており、国内外の案件を扱うことができるため、「三菱HCキャピタルに相談すればなんとかなる」という状態にしています。
②海外事業の強み
三菱HCキャピタルは、英国での金融サービスや米国を中心としたロジスティクス事業が収益も上げています。
特に、英国金融やロジスティクス事業は国内同業他社が有しない事業であり、差別化ができています。
この海外事業の強みを今後も活かしていくと考えられます。
③親会社との繋がり
三菱HCキャピタルは、三菱グループと日立グループの繋がりがあり、顧客基盤が安定しています。
日立グループは、再生エネルギー事業やグローバルでのインフラ事業を実施しており、三菱HCキャピタルにとっての大きな顧客になります。
三菱グループも同様に国内外でのビジネスを展開しています。
また、それぞれが非常に大きい企業グループですので、社会的な信頼が厚いです。
結果として、企業としての信頼に基づく、顧客との付き合いや従業員の安心感が生まれています。
三菱HCキャピタルの弱み
三菱HCキャピタルの弱みは大きく3つです。
1つ目が国内市場の縮小です。
低金利やデフレにより、リースの国内市場は縮小傾向にあります。
そのため、国内でただリースをやっているだけでは、必ず立ち行かなくなります。
結果として、成長を達成するためには、海外にいくか、新たなビジネスを作る必要性に迫られています。
2つ目が、「PMI」のリスクです。
PMIとはPost Merger Integration:ポスト・マージャー・インテグレーション」の略です。企業はM&Aで合併した後、企業文化を合体させ、評価制度や社内システム等を統合させて行く必要があります。この統合を進めて行くことを、PMIと呼びます。
三菱HCキャピタルは、2021年4月1日に三菱UFJリースと日立キャピタルが合併してできたばかりの会社です。
このPMIは非常に難しく、合併後数年は様々な困難が発生していると予想されます。
PMI時の問題について、考えられるものとしては下記が挙げられます。
・合併した際の力関係に応じて、特定の会社出身の従業員が評価で優遇される。
・異なる会社が合併したため、類似の業務を行っていても、承認ルートや作業手順が違う。
・合併して同じ会社なのに、ツールがバラバラで使いにくい。
・合併時に優秀な人材が社外に流出しており、合併前の予想通りに企業成長ができない。
・本質的な業務に加えて、上記を解決するための「マニュアル作成業務」「社内ツール統合業務」等が通常よりも多く発生する
これのPMI時の問題は、三菱HCキャピタルが強みとしている幅広い顧客基盤を活用するために必要な業務です。
三菱HCキャピタルはこのPMIを円滑にすすめるため、PMI業務をすすめる部署である「統合統括部」を新設しました。
結果として、現在では想定よりも迅速にPMIが進んでいるとのことです。
特に2社が合併したことにより、コストをかなり効率化することができます。
2024年の3月期に、M&Aの効果が最大化されるとのことです。
そのため24卒の学生は、入社のタイミングで、上記の実態を目の当たりにできるため、面白いタイミングになります。
かなりカオスな社内状況になっている可能性もありますが、このあたりをOB訪問で聞き出して置くことで、入社後のギャップを減らすことが可能です。
3つ目がROEの改善です。
三菱HCキャピタル前身のMUL は、過去10年程度、競合他社に先駆けて不動産や航空機リース事業を強化しました。
結果として資本が大きくなり、負債も年々増えています。
そのため、ROEの改善が今後非常に重要になってきます。(国内外の投資家が注視しています。)
よって、今後はコスト削減などの統合後の相乗効果の実現によって、どれだけROEを改善できるかが注視されていきます。
三菱HCキャピタルの競合分析
三菱HCキャピタルのライバル企業との時価総額・売上高の比較は下記となっています。
売上高(21年3月)
・オリックス(2兆3000億)
・三井住友ファイナンス&リース(1兆3000億円)
・東京センチュリー(1兆2000億円)
・三菱HCキャピタル(9000億円)
時価総額(2022年3月時点)
・オリックス(2兆8000億)
・三菱HCキャピタル(8400億円)
・東京センチュリー(5500億)
・三井住友ファイナンス&リース(※)
※三井住友ファイナンス&リースは、三井住友フィナンシャルグループ(5.5兆円)に属しているため単体の時価総額が不明
リース企業として見たときに、三菱HCキャピタルにとって、業界首位のオリックスが最も強いライバルとなります。
上記はビジネスの成績となりますが、事業内容では違う見え方もできます。
ここでは2つ例を上げて紹介します。
(a)ビジネスモデル
オリックスはリースだけでなく純投資も行います。
しかし、三菱HCキャピタルはあくまで、アセットファイナンス(「物」の販売・調達等に関わる金融)を事業の主軸とし、純投資は基本的に行いません。
就活生目線では、リースに限らず事業投資も興味がある場合はオリックスがより候補に上がってきます。
(b)社風
オリックスは果敢にビジネスを広げてきた挑戦心と営業マインドの会社です。
一方、三菱HCキャピタルは、三菱グループと日立グループを母体としているため、堅実性が売りです。
また三菱グループも日立グループも、グループの親会社の力が非常に強いため、親会社の意向を汲んで挑戦する社員が多いと考えられます。(詳細はopenworkをご覧ください。)
このように、オリックスとの比較を通じても三菱HCキャピタルの状況が見えてきます。
ご自身のやりたいことや性格にあった会社を選ぶように熟考してください。
オリックスについて詳細の企業研究を知りたいかたは下記のノートをご覧ください。
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