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ANAの企業研究

ANAの現状

まず、ANAの現状を2つの観点から読み解きます。

(a)財務状況
ANAの2022年3月期の業績としては、売上が約7400億円で約1000億の赤字となりました。

2020年度も約4000億円の赤字でしたので、2年連続の赤字になる見込みです
これはコロナによる航空業界の厳しい状態を表しています。

コロナ前のANAは、年間で売上2兆円、1500億ほどの純利益を稼ぎ出していた。
2021年度現在でも、かなりの影響を受けていることが伺えます。

またコロナ禍に入り、株価も急落しています。

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上記チャートの通り、コロナにより株価は半値ほどになってしまいました。
市場評価が急落したまま上がっていない現状から、投資家たちは、ANAの今後に対して明るい見通しを持っていないことが分かります。

(b)人員削減
ANAは、20年度末に約3万8千人だった「ANA」ブランドの航空事業の従業員数を25年度末に約2万9千人に減らす計画を明らかにしています。

これは、アフターコロナの未来を踏まえ、以前のような事業運営はできないことを示唆しています。

また、余剰人員に関しては、様々な外部の企業に出向させています。
例えば客室乗務員がコールセンターに出向してニュースとなっていました。
就活生はこの意味をしっかりと理解しておきましょう。

日系企業にとって、人員整理は、ほぼ最終手段です。
まれに、事業整理の一貫として少人数の希望退職者を募ることがありますが、今回のANAのケースは規模が全く違います。
人員をこれまで通り雇うことができないから一人でも多くの人にやめてもらう必要があるのです。
また従来の給料よりも3割減の状態になっているとのことです。

給与を大幅カットしたり、人を退職させてしまうと、会社の士気が下がります。
また本来やめてもらっては困る会社のエースやリーダーがいなくなることが多いです。
これは、雇用の流動性が低い日系企業にとっては、非常に避けたい事態です。
これらから、アフターコロナになったとしても、すぐに従来のような成長を描くことは困難な状況です。

ANAの強み

次にANAの強みについて、解説します。
コロナで影響を受けているとはいえ、ANAは日本トップのエアラインカンパニーとして君臨してきました。
競合のJALと比べても、コロナ前の2018年度には、年間売上がANA2兆円、JAL1.4兆円と大きな差がある状況でした。

今回はそんなANAの強みを、大きく2つ取り上げます。

①業界トップカンパニーとしての挑戦心
ANAはこれまで様々な先進事例で、エアライン業界を切り開いてきました。例えば、現在では当たり前になったweb搭乗手続きの「SkiPサービス」をスタートし、いち早いデジタル化を進めました。

加えて、開発から参画したボーイング787型機を世界で初めて導入するなど、パイオニアとしてのチャレンジを続けています。
このボーイング787は、その他のジャンボジェットと異なり、機体の操縦性や快適性が高いと知られています。

このように、顧客へのサービス向上のために、様々な取り組みを競合に先んじて行ってきたのがANAです。

openworkによれば、「国内トップであるブランド力」や「常に新しいことにチャレンジする姿勢」をANAの強みとして上げている人がいます。
客観的な事実だけでなく、社員が自認できる「挑戦心」は、企業文化として根強いものだと考えられます。

②ANAグループの総合力
ANAは持ち前のその挑戦心を用い、様々な事業に進出してきました。

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ANAリクルーティングサイトより引用
 https://www.ana.co.jp/group/recruit/about-us/by-the-numbers/
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ANAリクルーティングサイトより引用
https://www.ana.co.jp/group/recruit/about-us/by-the-numbers/

上記を確認すると、航空事業が主体ではありますが、その他にも多数の事業に進出していることが分かります。

例えば、ANAのトラベルメディア(広告)事業を紹介します。
実はANAは大きな広告媒体でもあります。
ANA(peachも含む)の機内では、様々な広告を打つことが可能です。
モニターやパンフレット、機内販売のグッズに至るまで、様々な販売促進のチャンスがあるのです。
そして広告出稿者に対して、デジタル広告の企画・提案から配信・レポーティングまで一貫したサービス提供も実施しています。

このように、航空機という大きな顧客接点を持つことで、その他の事業にも展開を行っているのです。

ANAの弱み

①財務状況の弱さ
同業であるJALと比較して、ANAは財務的に借金が多く、不健全な状態です。
背景としては、JALは2010年の経営破綻後、5215億円の債務免除で財務の健全化が進みました。
2020年6月末時点でANAの有利子負債は1兆3589億円、自己資本比率は33.9%であるのに対し、JALはそれぞれ5046億円、45.9%と差が生まれています。
(自己資本比率が40%以上であれば、安全性が高いと言われています。)

またそもそも航空業界は、固定費が非常に高いため、多くの負債を抱えるビジネスモデルです。

特に、ANAは戦略として、コードシェア便を多くは持たず、自社便の運行規模拡大を行っていました。
コードシェア便とは、一つの定期航空便に複数の航空会社の便名を付与して運航される便です。
競合のJALは10社以上のコードシェア便を扱っていましたが、ANAは2社程度のコードシェア便の活用にとどまっていました。
ANAの戦略は固定費(機体費用等)が大きくかかる反面、利益の刈り取りが大きくなるものでした。
つまり、リスクを取って利益の最大化を目指していました。
結果としては、この戦略が仇となり、固定費の増加による大きな痛手を伴う事となりました。

また中期経営戦略では、2020年度の売上を2兆3000億としてたものの、結果としては7000億程度にとどまった現状からも、今後の経営戦略の見通しが立たない状況であります。

加えて、2021年度は、年度途中で、業績予想を35億円の黒字から1000億円超の赤字と大幅に変更しました。

このように、全く数値的な業績予想が当てにならない状況です。

これらは、財務部門が問題なのではなく、外部環境に左右されすぎる事業特性が原因です。

今後も数年後にあらたなウイルスが流行ることや、どこかの地域で紛争が起きる可能性はあります。

ANAを志望する学生は、この現状を踏まえた上で、自らの専門性を持つ意識を持ってANAの選考に挑みましょう。

もし専門性がなければ、入社後に転職という選択が取りにくくなります。
こうなると、ANAと運命を共にすることになり、主体的なキャリアでは無く、受動的なキャリアになることが予想されます。
ANAと運命を共にすることが悪いのではありません。しかし、受動的なキャリアだと自らの選択肢が狭まっていくことを理解しましょう。

②ニューノーマルでの需要の変化
「コロナが終われば、また航空需要があがるだろう」と楽観視している方はいませんか?

オリンピック前のような訪日観光客の大幅増加は、もう見込みにくいです。
またビジネス客は、オンライン会議が定着し、そもそも航空機を利用しなくなっています。
コロナ前とは、もう時代が違うことを理解しましょう。

特に多くの企業は、出張の必要性が無いことに気づき、かなりの経費削減に動いています。
これはどの会社でも同様です。
本当に必要な出張しか、経費を認めない動きが生まれているのです。

政府もGoToなどの補助事業で、旅行業界を盛り上げようとしますが、これは一過性です。
ビジネスモデルの特性とニューノーマルの消費者行動から、これまでのANA像は大きく変わっていくことを理解しておいてください。

ANA志望の就活生に伝えたいこと

ここまで、ANAの事業上のリスクを多く話してきましたが、日本の航空業界のパイオニアとして大きな社会貢献をしてきた素晴らしい企業であることは間違いありません。

今後も旅客事業を中心に様々なチャレンジで社会に貢献していくはずです。

またANAには、「ANAで働くことが夢である」学生も少なからずいると思います。

この記事でご説明してきたリスクをよく理解した上で、それでもANAで働きたいという学生は、ぜひ選考を受けて見てください。

今も懸命に働いている優秀な社員さんと接することで、得られるものは多いと思います。

またもし新卒で縁がなかった場合でも、社会人になって良い成長をしていれば、再度チャレンジすることも可能です。

ANAは2023年度入社予定の選考について、2019年以降に大学を卒業した社会人も選考を受けられるようにしました。

ANA 2023年度入社 新卒採用 エントリー受付開始について|プレスリリース|ANAグループ企業情報www.anahd.co.jp

このようにANAは、少しでも入社意欲のある方に対しては、門戸を開放しているのです。

またもし、ANAへ転職したい場合、航空業界に知見を活かせる業界は他にも多くあります。

もうしこういったご相談があれば、オープンチャットで質問を受け付けていますので、ぜひご相談ください。

マナベル就活部では、皆さんの就職活動がうまくいくことを応援しています。

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